医療業界目指して登販、医療事務、医師事務取った人が精神保健福祉士目指してます。

登録販売者、医療事務、医療事務作業補助の資格を取得しました。現在は精神保健福祉士の勉強をしています。

専門科目、まとめのまとめ。(21.02.04更新)

 

ここは、これまで問題を解きながらまとめてきたものを随時追加しながらまとめていく場所です。

 

 

精神疾患とその治療》

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精神疾患とその治療》

認知症の種類とその特徴】      (『みんなの介護』他、参照)

 ◉アルツハイマー認知症  約68%

  ・初期症状………物忘れ(記憶障害)

  ・特徴……………見当識障害、物盗られ妄想、徘徊・多動

  ・進行、経過……記憶障害から見当識障害へとゆっくり進んでいく

  ・早期に低下し、抑うつ的、強迫的な人格変化を起こすことがある

  ・病識が早い段階で無くなることが多い

 ◉脳血管性認知症  約20%

  ・初期症状………物忘れ(記憶障害)

  ・特徴……………判断力障害、感情失禁、手足の震えや麻痺

  ・進行、経過……脳梗塞等が引き金となり、認知機能がまだらに(日内変動も)、段階的に悪化する

  ・アルツハイマー認知症に比べ、比較的人格は保たれる

  ・1回のラクナ梗塞発作の予後は一般に良好だが、その多発による多発性脳梗塞パーキンソン症候群や脳血管性認知症を呈することがある

 ◉レビー小体型認知症  約4% (男性が約2倍)

  ・初期症状………幻視、妄想、うつ症状

  ・特徴……………幻視、誤認妄想、パーキンソン症状

  ・進行、経過……調子が良い時と悪い時をまだらに繰り返して進行する 

 ◉前頭側頭型認知症  約1% (指定難病)(このうちの約8割がピック病)

  ・初期症状………感情の麻痺(ぼんやり、身だしなみに無頓着)、常同行動(同じ言動を繰り返す)、罪悪感の低下(万引きや痴漢)

  ・特徴……………性格の変化、自発性低下

  ・進行、経過……ゆっくりと年単位で症状が進行する(寝たきりになる)

  ・若年性認知症の原因にも

認知症を伴う疾患〉

 ◉正常圧水頭症

  ・髄液が脳室にとどまり周りの脳を圧迫することに繋がる

  ・頭部CT検査で確認することができる

  ・髄液シャント術で改善されることが多い

 ◉梅毒

  ・認知症、性格変化、進行麻痺

  ・感染後10~15年を経て発症

 ◉ガンザー症候群(認知症ではない) →→【解離性(転換性)障害】

  ・認知症様ないし小児症様

  ・ヒステリー性仮性認知症ともヒステリー性もうろう状態とも

  ・的外れ(でまかせ)応答

  ・留置所や刑務所など、心因の考えられる環境で生じる防衛機制

  ・解離性健忘に似た心理状態が引き起こす反応

  ・拘禁状態から解放されれば、自然寛解するケースがみられる

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精神疾患とその治療》

【解離性(転換性)障害】

 「解離性(転換性)障害」は、ICD-10では、「神経症性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害(F44)」に分類されています。「F4」は、障害の原因が、心因性である。

 「解離」とは、この自我統一性の統合機能が失われた状態。「転換」とは、心理的葛藤や精神的なストレスが身体症状に置きかえられることを意味する。

 無意識の心理的葛藤が、解離等の精神症状を引き起こしたり、身体症状に転換して起こるもの。

 解離性(転換性)障害の症状には、精神症状として現れるもの、身体症状として現れるもの、精神症状と身体症状が混合して現れるものがある。精神症状として現れる解離症状は、解離性健忘、解離性遁走、解離性混迷、トランス及び憑依障害等。身体症状として現れる解離症状は、失立、失歩、失声、難聴、視覚障害、振戦、けいれん等。精神症状と身体症状が混合して現れるものは、解離性けいれん(痙攣)等。

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精神疾患とその治療》

心的外傷後ストレス障害PTSD)】

 ・侵入的回想(フラッシュバック)

 ・アンヘドニア(無快楽症):無感覚・反応の低下に類する喜び・楽しみの感情の喪失、意欲の低下、将来への希望の持てなさ(うつ病相などでも発症)

 ・体験を想起させる刺激の回避、体験の健忘

 ・過剰な覚醒を伴う刺激性亢進や睡眠障害、集中困難

(外傷出来事から4週間以内の場合は、急性ストレス障害ASD)という。)


精神疾患とその治療》

【「離人・現実感喪失症候群」とその他の主な「神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害」(F4)】

 離人・現実感喪失症候群とは、身体や精神から自分が切り離されたような感覚が持続的、反復的にあり、自分を外側から観察しているように感じる離人感や、自分が外界から切り離されているような現実感の消失がある。生命を脅かすような経験、小児期の虐待や強度のストレスが引き金になると考えられる。

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精神疾患とその治療》

薬物療法の種類】

 薬物療法における薬物の種類を大きく分類すると、「抗精神病薬」と「気分安定薬」「抗うつ薬」「抗不安薬」に分類することができる。

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抗精神病薬

 ◎定型抗精神病薬

  統合失調症では、脳内の中脳辺縁系におけるドーパミンの過剰な伝達により、幻覚などの精神症状が出現します。定型抗精神病薬は、脳内のドーパミン神経系の伝達を遮断する作用を持っており、ドーパミンの過剰な伝達を防いで、幻覚などの精神症状を改善させる働きがあります。

  この定型抗精神病薬には、鎮静効果のあるクロルプロマジン、抗幻覚作用のあるハロペリドールスルピリドなどがあり、ドーパミン遮断作用により統合失調症の陽性症状に有効です。

 ◎非定型抗精神病薬

  非定型抗精神病薬は、ドーパミンだけでなく、セロトニンやその他の神経伝達物質への作用をもっており、幻覚などの陽性症状に対する効果だけでなく、錐体外路症状などの副作用の発現が少なく、定型抗精神病薬では改善が得られない陰性症状や認知機能障害に対しても効果が得られることがあるといわれています。

  この非定型抗精神病薬には、リスペリドン、パリペリドン、オランザピン等があります。

 ◎抗精神病薬の副作用

  ⚫︎黒質線条体系での作用による錐体外路症状

  ⚫︎パーキンソニズム

    パーキンソン病と似通った症状です。ただし、パーキンソン病では、症状が徐々に進行するのに対し、抗精神病薬の副作用では、手足の震え、小刻み歩行、無表情な仮面様顔貌、筋強直、歩行障害、姿勢不安定、運動障害などが、薬の使用により速やかに出現することを特徴とします。

  ⚫︎アカシジア

    筋強直による静座不能や、静止不能の状態をいいます。座ったままでいられない、じっとしていられない、下肢がむずむずする、下肢の灼熱感、足踏み、姿勢を絶えず変える、目的のない徘徊などがみられます。また、焦燥や不安といった精神的な動揺を感じたり、眠ることができない等の様々な反応があり、これらによって、自殺企図、衝動的行動につながることがあります。

  ⚫︎ジストニア

    筋肉が異常に緊張してしまう状態で、不随意で持続的な、筋収縮にかかわる運動障害です。口やあご、舌、顔面、頸部、胴体部、手足などが、つっぱる、ねじれるという状態を発現します。瞼の痙攣、眼球の上転、白目の状態になる、ものをうまく飲み込めない、呼吸がしづらい、顔や首が強くこわばる、首が反り返る、舌が出たままになる、ろれつがまわらない、体が傾くなどの症状を呈します。

  ⚫︎遅発性ジスキネジア

    抗精神病薬の長期使用でみられる副作用です。口の周囲の不随運動、頭部、四肢、体幹の筋肉の異常行動を発現します。異常な不随意運動の発現箇所としては、舌、口周辺部、顔面にみられることが多く、顔面口部に、繰り返し唇をすぼめる、とがらせる、舌を左右に揺らす、舌を突き出す、口をモグモグする、歯をくいしばるなどの症状がみられます。また、足が動いてしまって歩きにくい、手に力が入って力が抜けない、足が突っ張って歩きにくいなど、四肢等の異常運動がみられることがあります。

  ⚫︎漏斗下垂体系での内分泌・代謝系異常

    抗精神病薬によって、ドーパミン受容体遮断作用が、漏斗下垂体系に作用すると、プロラクチンの血中濃度が異常高値を示すようになり、高プロラクチン血症が引き起こされることがあります。プロラクチンが多量に分泌されると、脳下垂体からの、乳汁を放出させる刺激ホルモンの分泌が異常に亢進して、乳汁分泌や月経異常をきたします。

  ⚫︎悪性症候群

    抗精神病薬の投与中に、急に投薬を増量したり変更したり中断すると、重篤な副作用が現れることがあります。高熱、発汗、意識のくもり、手足の震えや身体のこわばり、言葉の話しづらさやよだれ、食べ物や水分の飲み込みにくさなどの錐体外路症状や、頻脈や頻呼吸、血圧の急激な上昇など、自律神経系の急激な変動などが複数認められることがあります。

    悪性症候群は、急性の多臓器不全など重篤な症状をたどることもありますので、迅速な対応が必要です。

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気分安定薬

 ◎炭酸リチウム

   中枢神経に作用して、感情の高まりや行動を抑える気分安定作用があるので、躁病や躁うつ病躁状態うつ病相の急性期などに使用されます。主な副作用として、手足の震え、のどの渇き、下痢、尿量の減少などがみられます。

   炭酸リチウムは、適正な血中濃度が保たれない場合、リチウム中毒症に至る可能性があります。リチウム中毒症では、甲状腺機能低下や腎臓機能障害のおそれがあるため、定期的な血中濃度の検査が必要です。

 ◎バルプロ酸ナトリウム

   気分安定作用と抗てんかん作用があり、躁病、躁うつ病躁状態てんかん等の治療に用いられます。

   主な副作用として、傾眠、ふらつき、吐き気、食欲不振、全身倦怠感などが報告されています。劇症肝炎などの肝障害や、高アンモニア血症を伴う意識障害、血小板減少等によるあざ、急性膵炎、口内のあれなどがみられることもあります。

 ◎カルバマゼピン

   脳内の神経の過剰な興奮をしずめて気分を安定させ、てんかん発作を抑える作用があるので、躁状態てんかんの治療に使用します。

    主な副作用として、眠気、めまい、ふらつき、けん怠感、疲れやすさ、運動失調、脱力感、発疹、頭痛等がみられます。まれに、再生不良性貧血、無顆粒球症などの血液障害や、皮膚や粘膜の過敏症を出現するスティーヴンス-ジョンソン症候群、肝機能障害などが報告されています。

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抗うつ薬

 うつ病は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンノルアドレナリンなどが不足してしまうために起こると考えられており、その脳内神経伝達物質の作用を強めるような働きをするのが抗うつ薬です。

 ◎三環系抗うつ薬

   三環系抗うつ薬の代表的なものに、イミプラミンがあります。三環系抗うつ薬は、モノアミンの再取り込みを阻害することによって、セロトニンノルアドレナリン等のモノアミンが減少することを抑える働きをします。

 このとき、アセチルコリンも阻害してしまう、抗コリン作用があるため、副作用として、口渇や排尿困難、眼圧上昇などが起こりますので、緑内症患者には禁忌とされています。

 ◎選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI

   抗うつ薬としての、選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI)は、セロトニンの再取り込み阻害作用だけを持ち、アセチルコリン等は阻害しません。このことによって結果的にセロトニン濃度がある程度高く維持されるので、従来の抗うつ薬でみられた抗コリン作用はほとんどみられません。

   投薬の効果は、服用後2週間から3週間を要しますので、効果がみられないからといって勝手に薬の服用をやめたり、症状の強いときだけ頓服のように使用するというような服用方法は、避けなければなりません。

   副作用としては、服用初期の吐き気や嘔吐、食欲不振等の消化器症状や、眠気、服用による体重増加や便秘などがあります。眠気に対しては、運転や危険な作業等に注意し、就寝前に服用することが勧められています。

   なので、空腹時に服用することをすすめるのは、適切ではありません。

   また、服用後初期に、不安、焦燥、パニック発作、不眠、易刺激性、衝動性、躁状態、めまい、ふらつき、性欲低下等の副作用がまれにみられます。これらの、中枢神経を刺激することによる症状を総称して「賦活症候群」、あるいは「初期刺激症状」といいます。

   この薬をうつ病患者に処方するときは、いらいらする、攻撃性が増すなどの出現に注意を促し、自殺関連の危険を回避できるようにしておくことが必要です。

   選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI)は、急に服用を中止すると、薬の血中濃度が下がり離脱症状が出現します。断薬時の離脱症状として、めまい、嘔吐、頭痛、知覚異常、不眠、不安、焦燥等などがありますので、薬の服用を中止するときは医師の指示により徐々に減らしていくことが必要です。

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抗不安薬

 ◎ベンゾジアゼピン抗不安薬

  抗不安薬は、不安や緊張、焦燥感の改善、催眠作用、筋弛緩、抗けいれん作用、自律神経に対する調整作用等があります。代表的なものにベンゾジアゼピン抗不安薬があります。中枢神経系を抑制する作用があるため、脳内の活動が落ち着き、心の不安、緊張を和らげることができます。

  副作用として、昼間の強い眠気、筋弛緩作用によるふらつき、精神依存性があります。眠気までいかなくても、ぼんやりした感じ、注意散漫、集中力低下などの症状が出る場合もあります。また、運動失調や、ろれつがまわらなくなったりすることもあります。そのほか、脱力感、疲労感、倦怠感なども、薬の服用のはじめによくみられます。

  服用後の記憶が障害される「前向性健忘」がみられます。ベンゾジアゼピンは、情動中枢としての海馬に作用して情動性興奮を鎮めるとともに、海馬の記憶機能を抑制し健忘を引き起こすと考えられています。

  理性の働きが鈍くなり、怒りやすさ、涙もろさなどがみられ、攻撃性や興奮性が次第に強くなり、年齢不相応な行動をとる「脱抑制」の状態になることが知られています。

  短期間の使用では依存性は生まれませんが、長期間の使用が続くと「身体依存性」が形成されてきます。連続して使用した後に急激に中止すると、中止後の初期に「反跳性の不安」(使用前より不安が増強すること)や、不眠、振戦、発汗、せん妄等の「退薬症状」が出現しやすくなります。

 

精神疾患とその治療》

【知的障害を引き起こす疾患】

フェニルケトン尿症は早期発見・早期治療により知的障害の発生を予防できる。
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精神疾患とその治療》

精神疾患の成因と分類】

 ⚫︎脆弱性ーストレスモデル

 ⚫︎三大分類

  ◎外因

   ・脳器質性:てんかん精神病

   ・症状性:全身性エリテマトーデス、甲状腺機能異常

   ・中毒性:アルコール依存症

  ◎内因

   ・統合失調症気分障害

  ◎心因

   ・解離性障害(ガンザー症候群含む)、不安症

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《精神保健の課題と支援》

【健康観(健康の概念)】

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◉WHOによる健康の定義

  WHOの健康の定義は、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」としている。

◉アルマ・アタ宣言

  アルマ・アタ宣言は、WHOとユニセフによって、1978年に、当時のソビエト連邦の都市の1つであるアルマ・アタにおいて開催された国際会議で採択された宣言。ここでプライマリ・ヘルスケアを提唱し、「西暦2000年までにすべての人々に健康を(Health for All)」という目標が掲げられた。そのために、地域住民を主体として健康の問題を住民自らの力で解決していくことを理念とした。

   →詳しくは、共通科目《人体の構造と機能及び疾病》のまとめにて。

◉プライマリ・ヘルスケア

  地域住民が参加して、包括的、継続的で、身近な保健・医療サービス(健康教育や予防接種など)を組織的に提供すること。

  アルマ・アタ宣言では、「プライマリー・ヘルスケアは、健康増進、予防、治療、社会復帰に有効なリハビリテーションといったサービスの実施など、地域社会の主要な保健問題を対象とする」とし、地域のニーズを重視する視点に立っている。

◉オタワ憲章とヘルスプロモーション

  WHOは、1986年にカナダのオタワ市において開催された第一回健康促進国際会議において、「ヘルスプロモーションに関するオタワ憲章」を採択した。

  このなかでヘルスプロモーションを、「人々が自らの健康とその決定要因を、自らより良くコントロールし、改善することができるようにするプロセスである」と定義した。

  この会議の議論は、「工業化された国での要求」に焦点を当てており、アルマ・アタでのプライマリー・ヘルスケア宣言等を踏まえて策定されている。「健康は、身体的な能力とともに社会的個人的な資源を強調する積極的な考え方」であるとし、「健康にとっての基礎的条件と資源」として、「平和、援護、教育、食料、所得、安定した環境システム、持続可能な資源、社会正義と公正」を挙げ、「健康」とは「生活の対象物ではなく、日々の人生の源」であるとしている。

 

《精神保健の課題と支援》

【精神病床からの退院後の行き先】

 精神病床からの退院患者の退院後行先としては、総数としては「家庭」が最も多く、次いで「他の病院・診療所に入院」となっている。

 しかしながら、入院期間別にみると、「3 ヶ月未満」及び「3 ヶ月以上 1 年未満」入院していた方は退院先として「家庭」が半数以上を占める一方、「1 年以上 5 年未満」及び「5 年以上」入院していた方は退院先として「他の病院・診療所に入院」が最も高い割合を占めている。

 平成26年患者調査によると、精神病床の入院期間が5年以上で家庭に退院する人は14.3%である。

 しかし、平成29年患者調査では8.3%となっている。

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《精神保健の課題と支援》

【精神科の患者にまつわる数字】

⚫︎「平成26年患者調査」によると、精神科病院の入院患者218万4000人のうち117万1000人(53.6%)が65歳以上である。

⚫︎「平成26年患者調査」によると、精神病床の入院期間が5年以上で家庭に退院する人は14.3%である。(平成29年患者調査では8.3%)

⚫︎「平成29年患者調査」によると、精神疾患を有する総患者数は約419.3万人となっている。

⚫︎「平成30年医療施設(静態・動態)調査・病院報告」によると、精神科病院の平均在院日数は265.8日となっている。

⚫︎「平成30年度衛生行政報告例結果の概況」によると、平成30年度末現在、精神障害者保健福祉手帳の交付者数は106万2700人(前年度比7.1%増)となっている。

 

《精神保健の課題と支援》

精神障害の労災認定基準】

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《精神保健福祉相談援助の基盤》

【ソーシャルアドミニストレーション】

ソーシャルアドミニストレーションとは、社会福祉施設の組織運営や管理を効率的・効果的に展開する援助技術である。それは、リスクマネジメントやIT情報管理も含まれる。

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《精神保健福祉相談援助の基盤》

【多職種連携の形態】

◉マルチディシプリナリーチーム (権威モデル)・・・

 高度な専門性を駆使。階層性がある。役割の開放性はなく独立実践が基本。救急医療等の緊急性のある医療が対象。

 チームのメンバーは互いに協力するが、 本質的には別々に働く異なる分野の専門職で構成される集団。各専門職は個別の治療やケアを行い、それぞれの目標も各専門職が個別に決定する。そのためそれぞれの実践は階層性を持ち、相互作用は小さくなり、役割も解放されない。

◉インターディシプリナリーチーム  (コンセンサスモデル)・・・

 専門職相互の意思決定、役割の開放性が一部あり階層性はない。専門職が協働。地域ケアにおけるアプローチ方法。

 メンバー間に階層性はなく、 相互作用が高いチーム。それぞれの役割はある程度は固定されているが、専門職相互の話し合いによる意思決定が行われ、専門職種の役割の開放性が一部にみられる。精神科デイケア等。こういうチームでは、 それぞれの方向性を一致させるためケースカンファレンス等が重要になる。緊急性のない慢性の疾患を抱えるクライエント等が対象。

◉トランスディシプリナリーチーム  (マトリックスモデル・分野横断的モデル)  ・・・

 相互作用性が大きく、役割の代替可能性が高い。階層性は無い。ACT(※)等に代表される。

 メンバー間に階層性はなく、役割が解放され、他の専門職の知識技術を相互吸収し、総合作用が高いチーム。意思決定過程においては、専門職の知識や技術の寄与、相互依存性と平等性が高いモデル。それぞれのメンバーが高いレベルでフォローしあうことができる。

※ ACT(Assertive Community Treatment:包括的地域生活支援)は、重い精神障害をもった人であっても、地域社会の中で自分らしい生活を実現・維持できるよう包括的な訪問型支援を提供するケアマネジメントモデルのひとつ。

 1970年代初頭(1960年台後半とも)にアメリウィスコンシン州マディソン市で生まれてから多くの国に普及し、 効果が実証されている。特徴としては、

 ◎看護師・精神保健福祉士作業療法士精神科医からなる多職種チームアプローチであること

 ◎利用者の生活の場へ赴くアウトリーチ(訪問)が支援活動の中心であること

 ◎365日24時間のサービスを実施すること

 ◎スタッフ1人に対し担当する利用者を10人以下とすること

 このような特徴は、医療・福祉・リハビリなど多岐にわたる支援を網羅する集中的で包括的な、利用者のあり方に沿った地域生活を支えるために、 欠くことの出来ない要素である。

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(覚え方:「チーム医療」のマルチ、「ACT」のTはトランス。)

 

《精神保健福祉相談援助の基盤》

【ソーシャルロール・バロリゼーション】

 1983年にヴォルフェンスベルガーが提唱。ノーマライゼーションの理念をアメリカに導入し、ソーシャルロール・バロリゼーションの概念を再構築した。

 ソーシャルロール・バロリゼーションは、価値のある社会的な役割を獲得すること。可能な限り文化的に標準となっている手段を用いて、人々、ことに価値評価の点でリスクを抱えている人々のために、価値ある社会的役割を可能にすること、確立すること、高めること、支持すること、そして防衛することとされている。

 ノーマライゼーションとは、すべての人々が普通の生活を営めるような社会を構築していくという考え。ノーマライゼーションのこのような原理は、社会基準から逸脱した者から、社会への同調を過度に要求するものではないか、という批判や反発を受けた為、後に「ソーシャルロール・バロリゼーション」の使用を始めたと言われている。

 「個人の能力を高めること」や「社会的イメージの向上」を重視。通常に近い行動や外観をとるなど、文化的にアブノーマルな個人の行動・特性についてノーマルになるよう働きかけることも、重要視される。この点が従来の北欧のノーマライゼーションの流れとの違い。

 (social role valorization:社会的役割の実践)

 

《精神保健福祉相談援助の基盤》

ソーシャルワークにおけるアプローチ】

◉心理社会的アプローチ

  ホリス、ハミルトンが主な研究者。

  診断主義的アプローチを基礎に、「状況の中の人」としてクライエントの心理的側面と社会的側面(状況の中の人)の相互関係に着目し、両側面が相互に影響し合っていると捉え、人と環境相互の機能不全の解消に焦点を当てる。

  両者の協働により問題の解決を図り、人と状況相互の機能不全を減じることに目標がある。

◉機能主義ソーシャルワーク(機能的アプローチ)

  ランクの意志心理学(成長の心理学)に基づき、機関の機能を活用し、クライエントこそが成長の主体とし、援助の責任は援助者にはなく、クライエントに帰するものとした。

  タフトやロビンソンなど。

◉問題解決アプローチ

  パールマンが構築。利用者が「動機づけ」、「能力」、「機会」を積極的に活用し、援助者との役割関係を通じて展開される問題解決の過程であるとする。

  その利用者の力を「ワーカビリティ」とした。

  (尚、パールマンは「4つのP」の人。)

◉行動変容アプローチ

  誤って学習した、もしくは学習できなかったために生じる不適応行動を変容させる。

  クライエントが抱く具体的な解決イメージに焦点を絞った関わりを行う。

  「認知行動療法」など。トーマス。

◉危機介入アプローチ

  リンデマン、カプラン、ラポポート、ゴーランなど。

◉課題中心アプローチ

  問題解決アプローチの流れから生まれた、短期処遇の方法。

  リード、エプシュタイン。

◉家族システム・アプローチ

  家族を一つの生態システムとして捉え、家族全体の力動性を評定し、介入を試みる方法。

  ハートマン、レアードなど。

◉エンパワメント・アプローチ

  エンパワメントの元の意味は「権利や権限を与えること」。差別・抑圧を受けている人が、自らの主体性を持って、力を行使できるようになるプロセスを意味する。

  自尊心を高める過程を支援する。

◉ナラティブ・アプローチ

  社会構築主義ポストモダニズム)の視点。当事者自身が語る物語(ナラティブ)そのものに意味を見出す。

  自己への見方の変化を期待する。

  クライエントのドミナントストーリー(思い込みの物語。「当たり前」と感じているもの)からオルタナティブストーリー(代替の物語。違う面からの気づき)を構築することに焦点を絞った関わりを行う。

  マーゴリン。

リカバリーの実践モデル

  元気回復行動プラン(WRAP)、疾病管理とリカバリー(IMR)、個別就労支援プログラム(IPS)、当事者研究など。

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《精神保健福祉の理論と相談援助の展開》

【精神科リハビリテーション

 精神科リハビリテーションの社会的リハビリテーションの展開過程は、一般のケースワークやケアマネジメントと同様、インテーク(受理面接)、アセスメント(課題分析)、プランニング、インターベンション(介入)、モニタリング(経過観察)、エヴァリュエーション(事後評価)、ターミネーション(終結)という、一定のプロセスのもとに行われる。

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◉インテーク

 インテークは受理面接のことで、相談の受付、ケースの発見による相談を開始する段階です。インテークは、信頼関係の構築、主訴の傾聴と課題の明確化、相談機関の説明、利用意思の確認と利用の契約の締結を行います。

◉スクリーニング

 相談の受け付け、ケースの発見が行われたら、ケースの複雑性、緊急性などを把握し、支援が必要であるかどうか、また、その相談機関での対応が可能であるかどうかを判断します。これをスクリーニングといいます。複数のサービスや支援を総合的、継続的に提供する必要があると認められたケースで、本人が利用を希望した場合に、援助の対象になります。

◉リファーラル

 スクリーニングによってケースワークが必要であると判断されたケースに関しては、相談者の主訴を明確に把握し、問題がその機関の機能に合致するかどうかを判断します。相談内容が、自分の所属する機関が扱っていないか適切ではない場合などは、相談内容に適合する、他の相談支援機関に紹介します。これをリファーラルといいます。

◉アセスメント

 アセスメントとは「課題分析」のことで、利用者の現状とニーズを、総合的に理解し把握、評価する。またそのニーズを充足するための、社会資源を把握する。具体的には、利用者の「社会的機能の評価」、利用者を取り巻く環境で利用者が利用できる社会資源の実態を把握する「社会資源の評価」を行う。

リハビリテーション計画策定

 リハビリテーションを進めていくためには、リハビリテーション計画を策定することが必要です。まず総合目標を設定します。総合目標の設定に際して最も留意すべきことは、本人の希望や思いを優先して設定することです。

 リハビリテーションの実施のためには、本人の動機づけが最も大きな要因になりますので、実現性の乏しいと思われるような願望であっても、最初から否定するのではなく、希望や願望を重視した総合目標を設定することが求められます。

 計画策定に際しては病状に配慮すべきですが、それだけに偏ることなく、生活の質の向上や、本人の可能性を引き出す計画となるよう、作成していきます。長期目標として本人の希望や願いを尊重したものを設定し、短期目標として実情を踏まえた実現可能な目標を設定するとよいでしょう。フォーマルな社会資源にとどまらず、インフォーマルな社会資源を活用していくことも大切です。

技能開発計画

 リハビリテーション計画には、「技能開発計画」と「資源開発計画」があります。

 アセスメントで行った社会生活機能評価に基づいて、利用者の技能開発計画を策定します。技能開発計画には、「直接的技能教育計画」と「技能プログラミング計画」があります。

 直接的技能教育計画は、新たな行動能力を習得するための体系的な教育計画で、日常生活技能、社会生活技能、問題解決技能、自己管理技能等の開発等を行う計画のことです。 技能プログラミング計画とは、すでに習得している技能を適切に使用できるようにするための計画です。

資源開発計画

 資源評価に基づいて資源開発計画を策定します。資源開発とは資源に対する介入のことで、資源の開発と資源の調整と資源の修正があります。資源の開発とは、必要な資源がない場合、その資源を作りだすことです。資源の調整とは、すでにある資源と当事者を結びつけることで、資源の修正とは、利用者のニーズに合うように資源提供者と交渉することです。資源開発計画には、障害の理解に向けた周囲への働きかけも含まれます。

◉インターベンション(介入)

 支援計画が作成されたら、計画の実施の段階に移ります。技能開発計画に基づいて利用者が日常生活や社会生活技能、問題解決技能、自己管理技能等を習得できるように支援します。

 また、資源開発計画に基づいて、資源の開発、資源の調整、資源の修正等を行います。社会資源のなかには、利用者の社会生活を支援するためのサポート体制も含まれます。そのため、利用者のサポート体制の構築、ネットワーキング、コーディネーション等を実施します。

 インターベンションでは、支援者及び支援機関が、利用者本人とチームを組み、援助者はチームの一員として、利用者を支援していきます。利用者のニーズ充足に向けて、様々な支援者や支援機関が、それぞれの役割を遂行していきます。

◉モニタリング(経過観察)

 効果の判定、欠点、将来予測及び今後の改善策を検討すること。

 支援計画に基づいた支援が適切に実施されているかどうか、状況の変化や新たなニーズが発生していないかどうかなどを検証するために、モニタリングを実施します。短期目標、長期目標に対して支援計画が有効に機能しているか、利用者の満足度、サービスの質等を確認します。

エバリュエーション(事後評価)

 エバリュエーション(事後評価)においては、支援を実施した後、相談援助過程における、クライエントのニーズがどれだけ充足されたか、また、計画における目標をどれだけ達成することができたかを客観的、総合的に精査し評価します。

 支援の全体を振り返り、目標の達成度や課題の解決などを評価しますが、その際、利用者自身の満足度、達成感、リカバリーの到達度なども含めて評価することが必要です。

◉ターミネーション(終結)とアフターケア

 支援計画の目標が達成され、支援が必要でなくなった場合、支援は終了します。終結時には、クライエントの不安等の感情に対する配慮も必要になります。アフターケアとして、新たな課題が生まれ支援が必要になった場合は、再度支援する可能性があることを利用者に伝えておくことにより、利用者に安心感を与えます。

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《精神保健福祉の理論と相談援助の展開》

【グループワークの流れ】

 準備期→開始期(関係形成)→作業期(メンバー間に相互作用)→終結期。

 グループワークの開始期では、メンバーに自己紹介を促し、参加理由を話してもらう。メンバーの凝集性を高めるため、自己紹介等は工夫を凝らしたほうがよい。開始期では、精神保健福祉士とメンバーの信頼関係の形成が重要であり、そのためにメンバーのニーズや不安な気持ちなどを率直に表出できるよう、発言の機会などを多くつくることが必要で、否定的な気持ちや批判的な意見を自ら進んで発言することを促すものではない。また、メンバー間の関係性がまだできていない開始期にあっては、精神保健福祉士が中心になってプログラム計画の立案等を行ったほうがよい。

 グループワークの作業期では、メンバーの問題解決に役立つ社会資源の情報を提供する。

 グループワークの終結期では、メンバー自身のグループ体験の評価、記録などをまとめる。

 

《精神保健福祉の理論と相談援助の展開》

【ケアマネジメントの類型】

 インテンシブ・ケア・モデル(集中型モデル)は、重度の精神障害者を地域で継続的に支えるモデル。ACTも同様の考え方をもっている。(intensive:集中的)

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《精神保健福祉の理論と相談援助の展開》

リハビリテーションの評価尺度】

◉GAF

 GAF(Global Assessment of Functioning;機能の全般的評定)は、精神症状を含めた社会生活の全体機能を評価する。

 「症状の重症度」と「心理的・職業的・職業的機能」の2つの側面について評価する。

 心理的、社会的、職業的機能を考慮するもので、身体的(または環境的)制約による機能の障害を含めない。

◉PANSS

 PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale;陽性陰性症状評価尺度)は、統合失調症の精神症状の評価尺度であり、「陽性症状」7項目、「陰性症状」7項目、「総合精神病理」16項目で全般的に評価する。

◉REHAB(精神科リハビリテーション評価尺度)

 病棟における入院患者の行動を、訓練を受けた評価者が過去1週間の観察に基づいて評価する行動観察尺度である。行動尺度は23項目で構成され、「逸脱行為」4段階、「全般的行動」10段階で評価する。

◉LASMI(精神障害者社会生活評価尺度)

 日常生活、対人関係、労働または課題の遂行、持続性・安定性、自己認識の5つの下位尺度がある。

 5つの尺度40項目からなり、これらの項目について5段階評価を行い、レーダーチャート化して評価する。

◉職業レディネス・テスト

 一時性の職業能力評価尺度で、職業に対する興味と職務遂行の自信度を39項目についてチェックするものである。

◉VPI職業興味検査

 160の職業名についての興味や関心の有無を解答するようになっている。

◉SBS(社会行動評価尺度)

 地域で生活する長期慢性患者の社会機能評価のための尺度である。

◉フィデリティ評価尺度

 あるプログラムが効果的なプログラム基準に準拠している程度を測定する尺度。ACTや個別就労支援(IPS)で開発されている。

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《精神保健福祉の理論と相談援助の展開》

マッピング技法】

ジェノグラムでは、3世代以上の家族にわたって見られる関係性の特徴や問題の連鎖が把握できる。

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精神障害者の生活支援システム》

精神病者の保護及び精神保健ケア改善のための諸原則(国連原則)】

(別称:精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則)

国連原則1-1  すべての人は保健と社会的ケアの体系の一部である、最良で有用な精神保健ケアを利用する権利を有する。

国連原則1-2  精神病者又は精神病者として扱われているすべての人は、人道的かつ人間固有の尊厳を尊重して処遇される。

国連原則3    精神疾患を有するすべての者は、可能な限り地域社会に住み、及びそこで働く権利を有する。

国連原則4ー1  精神疾患を有するという判定は、国際的に認められた医学的基準による。

国連原則4ー2  精神疾患を有するという判定は、政治的、経済的若しくは社会的地位、文化的、人種的若しくは宗教的集団に所属すること又は直接精神状態に関係しない他の何らかの事由に基づいてはなされてはならない。

国連原則7-1  すべての患者は、できる限り自らが居住する地域で治療を受け、ケアされる権利をもつ。

国連原則7-3  すべての患者は、自らの文化的背景に適した治療を受ける権利をもつ。

国連原則9ー1  すべての患者は、最も制限の少ない環境下で、かつ、患者の保健上の必要性と他の人の身体的安全の保護の必要性に照らして適切な、最も制限が少ない、あるいは最も侵襲的でない治療を受ける権利を有する。

国連原則9ー2  すべての患者の治療及びケアは、個別的に立案された治療計画に基づいて行われなければならない。その治療計画は患者と検討され、定期的に見直され、必要に応じて変更され、資格のある専門職員によって作成される。

国連原則10-1 投薬は、患者の最良の健康ニーズを満たすものであり、罰として、又は他者の便宜のために用いられてはならない。

国連原則11-2 インフォームドコンセントとは、患者の理解しうる方法と言語によって、以下の情報を、十分に、かつ、患者に理解できるように伝達した後、患者の自由意志により、脅迫又は不当な誘導なしに得られた同意をいう。

精神病者の保護及び精神保健ケア改善のための諸原則」(国連原則) (1991年12月採択)

http://www.kansatuhou.net/10_shiryoshu/04_02UNmental_gensoku.html

 

精神障害者の生活支援システム》

【就労支援の機関と専門職】

公共職業安定所ハローワーク

  就職を希望する障害者の求職登録を行い、専門職員及び職業相談員がケースワーク方式により、きめ細かな職業相談から職場定着指導までを行う。

  精神障害者雇用トータルサポーター(精神保健福祉士臨床心理士)、職業促進指導官が配置されている。

◉地域障害者職業センター障害者雇用促進法

  高齢・障害・求職者雇用支援機構が各都道府県に1ヶ所ずつ設置運営。

  職業カウンセリング、職業評価、準備支援、職場適応援助者支援、精神障害者総合雇用支援など。

  精神障害者総合雇用支援の事業は、支援対象者および雇用事業主に対して、精神障害者の雇用促進支援・職場復帰支援・雇用継続支援を、主治医等との連携の下で、総合的に行う。

  障害者職業カウンセラー職場適応援助者(ジョブコーチ)を配置。

  (ジョブコーチは地域障害者職業センター所属(配置型)の他に、訪問型(第1号)と企業在籍型(第2号)が存在。

   第1号ジョブコーチは障害者の就労支援を行う社会福祉法人等に雇用される。第2号ジョブコーチは、障害者を雇用する企業に雇用される。)

◉障害者職業総合センター

  高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置運営(同機構は他に「広域障害者職業センター」も設置運営)。

  障害者のリハビリテーションに関する研究、支援技術の開発、専門的な人材の育成を行う。

◉障害者就業・生活支援センター(障害者雇用促進法

  障害者の職業的自立を実現するため、就業面の支援と生活面の支援を一体的に行うことを目的としている。職業準備訓練や職場実習の斡旋など。

◉就労移行支援(障害者総合支援法)

  就労を希望する者のうち、通常の事業所で就労する事が可能と見込まれる65歳未満の障害者に対し、生産活動や職場体験などを通じて就職及びその後の職場定着のために必要な訓練その他の便宜を図る。

  職業指導員、生活支援員、就労支援員、サービス管理責任者などが配置。

  利用期間は2年(1年更新可能)。

◉就労継続支援(障害者総合支援法)

  通常の事業所に雇用される事が困難であり、雇用契約等に基づく就労が可能である65歳未満の者に対し、雇用契約の締結等により就労や生産活動の機会の提供や必要な訓練その他の便宜を図るA型(雇用型)と、雇用契約等に基づく就労が困難である者に対して年齢制限無く行うB型(非雇用型)がある。

  職業指導員、生活支援員、サービス管理責任者が配置。

  共に利用期間の制限は無し。

◉障害者職業訓練コーディネーター

  障害者の態様に応じた多様な委託訓練では、各都道府県に障害者職業訓練コーディネーターを配置し、企業、社会福祉法人NPO法人、民間教育訓練機関等多様な委託先を開拓し、個々の障害者に対応した委託訓練を大幅に拡充して機動的に実施している。

◉5人以上の障害のある従業員のいる事業所

  障害者職業生活相談員を従業員から選任し、職業生活全般における相談・指導を行う義務。(障害者雇用促進法

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精神障害者の生活支援システム》

精神障害者社会復帰施設の概要】

精神障害者生活訓練施設

  精神障害者のため家庭において日常生活を営むのに支障がある精神障害者が日常生活に適応することができるように、低額な料金で、居室その他の設備を利用させ、必要な訓練及び指導を行なうことにより、その者の社会復帰の促進を図る施設

  定員:20名以上

  職員:6名以上    施設長、精神保健福祉士(1名以上)又は精神障害者社会復帰指導員4名以上、医師

精神障害者福祉ホーム

  現に住居を求めている精神障害者に対し、低額な料金で、居室その他の設備を利用させるとともに、日常生活に必要な便宜を供与することにより、その者の社会復帰の促進及び自立の促進を図る施設

  定員:10名以上

  職員:2名以上    管理人、医師

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《精神保健福祉に関する制度とサービス》

【障害者総合支援法における施設】

 旧法(障害者自立支援法)による精神障害者社会復帰施設においては、地域生活支援センターが地域活動支援センターI型へ、他の施設はその多くが訓練等給付で規定される施設へと移行した。

 地域活動支援センターでは、障害者が地域社会の中で交流を持ちながら生活していくための日中の活動(創作的活動や生産活動の機会)をサポートするサービスが提供されている。

 設置は都道府県への届出制。

◉地域活動支援センターⅠ型:

  医療・福祉及び地域の社会基盤との連携強化のための調整やボランティア育成、障害に対する理解を図るための普及啓発などの事業が実施される他、相談支援事業も合わせて実施される。

  精神保健福祉士社会福祉士などの専門職の配置が必要。1日あたりの実利用人員は20人以上。

◉地域活動支援センターⅡ型:

  雇用・就労が困難な在宅障害者に対し、機能訓練、社会適応訓練、介護方法の指導、レクリエーション、入浴や食事等のサービスが実施される。

  1日あたりの実利用人員は15人以上。専門職の配置は必須ではない。

◉地域活動支援センターⅢ型:

  旧小規模作業所

  地域の障害者のための援護対策として地域の障害者団体等によって、適所での援護事業(小規模作業所)の実績を概ね5年以上有し、安定的な運営が図られている事が必要。

  活動内容は作業や交流の場など、施設による。

  1日あたりの実利用人員は10人以上。専門職の配置は必須ではない。

◉就労移行支援:

  就労を希望する者のうち、通常の事業所で就労する事が可能と見込まれる65歳未満の障害者に対し、生産活動や職場体験などを通じて就職及びその後の職場定着のために必要な訓練その他の便宜を図る。

  利用期間は2年(1年更新可能)。

◉就労継続支援A型:

  通常の事業所に雇用される事が困難であり、雇用契約等に基づく就労が可能である65歳未満の者に対し、雇用契約の締結等により就労や生産活動の機会の提供とともに、その知識・能力の向上のために必要な訓練その他の便宜を図る。

  利用期間の制限は無し。

◉就労継続支援B型:

  通常の事業所に雇用される事が困難であり、雇用契約等に基づく就労が困難である者に対して、就労や生産活動の機会の提供を通じて、その知識・能力の向上のために必要な訓練その他の便宜を図る。

  利用期間の制限は無し。

◉就労定着支援:

  通常の事業所に新たに雇用された障害者に対して、就職後の体調管理、勤務管理など職場に定着できるように継続的に支援を行う。

  利用期間は3年。(2016改正により2018(平成30)年度から)


《精神保健福祉に関する制度とサービス》

【障害者計画……障害者基本法、義務。国:障害者基本計画。期間の規定なし。

 障害福祉計画……障害者総合支援法、義務。国:厚労大臣が定める基本指針。3年1期。

 障害児福祉計画……改正児童福祉法、義務。国:厚労大臣が定める基本指針。3年1期。】

 「障害者計画と障害福祉計画、また、市町村地域福祉計画もしくは都道府県地域福祉支援計画等は、調和の保たれたものとして策定されなければならない。」障害者総合支援法

 「障害児福祉計画は障害福祉計画と一体のものとして作成することができる。障害者計画・市町村地域福祉計画もしくは都道府県地域福祉支援計画などとの調和が保たれたものでなければならない。」

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《精神保健福祉に関する制度とサービス》

社会福祉事業】

 社会福祉事業は、第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業とに分類されている。第一種社会福祉事業は経営の安定を通じた利用者の保護の必要性が高い事業(主に入所施設サービス)であり、第二種社会福祉事業は公的規制が低い事業(主に在宅サービス)である。(社会福祉法第2条)

 社会福祉法では、第一種社会福祉事業は、国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することを原則としている。

 因みに、共同募金、生活保護法の保護施設は第一種社会福祉事業、日常生活自立支援事業、社会福祉法による無料低額宿泊所は第二種社会福祉事業である。

 

《精神保健福祉に関する制度とサービス》

【日常生活自立支援事業】

 日常生活自立支援事業は、社会福祉法に第二種社会福祉事業として規定されている。また、実施主体が定める利用料を利用者が負担するようになっている。

 対象者は、認知症高齢者、知的障害者精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な人、事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる人である。

 日常生活自立支援事業では、福祉サービスの利用援助、苦情解決制度の利用援助、住宅改造、居住家屋の貸借、日常生活上の消費契約や住民票の届出等の行政手続に関する援助等が行われるが、財産の処分、介護保険の契約に関する事柄などは援助していない。

 福祉サービス利用等具体的な援助は、専門員の指示を受けた生活支援員が担当する。

 実施主体は、都道府県・指定都市社会福祉協議会(窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等で実施)である。

 

《精神保健福祉に関する制度とサービス》

【法律の変遷】

1900(明治33)年 精神病者監護法 監護義務者の順位を定め、

                  監置には行政庁の許可が必要。

1919(大正8)年  精神病院法   主務大臣が道府県に精神病院設置を命ずる。

                 (代用病院を指定できる。)

1950(昭和25)年 精神衛生法   私宅監置廃止。措置・同意入院制度。

                  精神衛生鑑定医制度。

 (1964年 ライシャワー事件)

1965(昭和40)年 改正      精神衛生センター。

                  保健所の地域精神衛生業務明確化。

                  通院医療費公費負担制度。

 (1984年 宇都宮病院事件)

1987(昭和62)年 精神保健法   任意入院制度。精神保健指定医制度。

                  権利等の告知義務制度。

                  精神医療審査会。社会復帰施設法定化。

1993(平成5)年   改正      地域生活援助事業(グループホーム)。

                  社会復帰促進センター

                  保護義務者→保護者

 (1993年 障害者基本法

1995(平成7)年   精神保健福祉法 「自立と社会経済活動への参加」

                  精神障害者保健福祉手帳

                  社会復帰施設4類型(生活訓練施設、

                  授産施設、福祉ホーム、福祉工場)

                  社会適応訓練事業。

1999(平成11)年 改正      精神障害者の定義(※)

                  移送制度(措置・医療保護・応急入院)。

                  保護者の義務の緩和

                                                              (自傷他害防止監督義務の削除。

                  任意入院者及び通院患者に対する治療を

                  受けさせる義務の免除。)

                  地域生活支援センター(社会復帰施設の1つとして)。

                  精神保健福祉センター都道府県・指定都市義務化

                  (2002年4月から)

 (2003年 医療観察法

 (2003年 支援費制度  身体・知的のみ。精神は除外)

 (2004年 発達障害者支援法)

 (2005年 障害者自立支援法  3障害一元化)

2005(平成17)年 改正      障害者自立支援法成立に伴う改正。

                   精神分裂病統合失調症

2006(平成18)年         精神病院→精神科病院

 (2005年 障害者自立支援法改正  発達障害、対象)

2013(平成25)年 改正      保護者制度の廃止。

                   病院管理者に退院後生活環境相談員の選任義務。

                   退院支援委員会(この2つは医療保護入院の見直し)。

 (2013年 障害者総合支援法改正(前年成立)  「難病等」、対象)

 

(※:「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう)

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《精神保健福祉に関する制度とサービス》

【国連等の障害者関連の流れ】

1948年  世界人権宣言

        すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利について平等である。

          (1949年 身体障害者福祉法

          (1950年 精神衛生法

1966年  国際人権規約

        A規約(社会権的人権)は「経済的、社会的及び文化的権利」に関するもので、B規約(自由権的人権)は「市民及び政治的権利」に関する規約。

          (1970年 心身障害者対策基本法(現 障害者基本法))

1975年  障害者の権利に関する宣言

        すべての障害者の人間としての尊厳の尊重。

        同年齢の他の市民と同等の基本的権利を持つ。

1979年  国際障害者年行動計画 決議

1981年  国際障害者年

        「完全参加と平等」

1982年  障害者に関する世界行動計画 決議

        障害の予防、リハビリテーション、機会均等化。

        ノーマライゼーション、メインストリーミング。

1983年~1992年  国連・障害者の十年

          (1987年 精神保健法

1991年  精神病者の保護および精神保健ケア改善のための諸原則(国連原則) 採択

        すべての精神病者は可能な限り地域において生活し、働く権利を有する。

        すべての患者の治療及びケアは、個別的に立案された治療計画に基づいて行われなければならない。

          (1993年 障害者基本法 に改称)

1993年~2002年  アジア太平洋障害者の十年

          (1995年 精神保健福祉法) 

          (2005年 障害者自立支援法

2006年  障害者の権利に関する条約 採択(12月→2007.9 日本署名→2008.5 発効)

        (“Nothing about us without us”(私達の事を私達抜きで決めないで)

         条約の制定過程に当事者が参画した。)

        すべての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進するとした。

          (2011年 障害者虐待防止法。障害者基本法 改正。)

          (2012年 障害者総合支援法)

          (2013年 障害者差別解消法)

2014年  障害者の権利に関する条約 日本批准

 

《精神保健福祉に関する制度とサービス》

【精神医療審査会】

 1987(昭和62)年の精神保健法都道府県(指定都市)に設置された。事務は精神保健福祉センターが行う。

 5人の合議体で、医療委員2名以上(精神保健指定医に限る)、法律家1名以上(弁護士、検事等)、精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者1名以上(精神保健福祉士保健師等)で、知事が任命。任期は2年。病院管理者は、精神医療審査会の合議体の場で、意見を陳述することができる。

 ①精神科病院の管理者から提出される医療保護入院の届出、措置入院医療保護入院患者の定期病状報告について、その入院の適否を審査する、②退院や処遇改善請求があった場合、それらの請求の適否を審査する。

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《精神保健福祉に関する制度とサービス》

医療観察法の処遇期間】

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医療観察法における鑑定入院の期限は2か月であるが、必要な場合は1か月の延長が認められる。